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従業員の研修費用は経費になりますか?給与課税されない3つの条件を国税庁の通達で確認しました

会社が負担した従業員の研修費用は、職務に直接必要で金額が適正であれば給与として課税されません。根拠は所得税基本通達36-29の2です。加えて平成元年の国税庁長官通達には、従業員の間に差を設けていないことという条件も示されています。あわせて、賃上げ促進税制の教育訓練費の上乗せ措置が令和8年度改正で廃止されている点も確認しました。

従業員の研修費用は経費になりますか?

職務に直接必要な技術や知識を習得させるための費用で、金額が適正であれば、従業員への給与として課税されません。ラーニーズ学びナビが2026年8月27日に国税庁のタックスアンサーNo.2601と所得税基本通達36-29の2で確認しました。

国税庁が公開している資料が定めているのは「従業員への給与として課税するかどうか」です。会社側で損金に算入できるかを正面から扱ったコード番号付きのタックスアンサーは、2026年8月27日時点の国税庁の公開資料では確認できませんでした。「経費になるか」という質問には、給与課税の論点と損金算入の論点の2つが含まれています。

給与として課税されない条件は何ですか?

所得税基本通達36-29の2の条件は2つです。国税庁のページで確認した通達の文言では、役員または使用人としての職務に直接必要な技術もしくは知識を習得させ、または免許もしくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用または大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品について、これらの費用として適正なものに限り課税しなくて差し支えない、とされています。

条件を分けると次のようになります。

  • 1つめは、その研修が職務に直接必要な技術または知識の習得であることです。
  • 2つめは、支給する金額がその費用として適正であることです。

通達の対象は「役員又は使用人」です。役員も同じ条文の対象になります。

タックスアンサーNo.2601は令和7年4月1日現在の法令等にもとづく内容として公開されており、根拠法令等の欄に所得税基本通達36-29の2が挙げられています。

従業員の間で扱いに差があるとどうなりますか?

国税庁長官が平成元年3月10日に発出した個別通達(直法6-5、直所3-6)には、従業員の間に差を設けていないことという条件が示されています。労働省からの照会に対して、国税庁が照会のとおり取り扱って差し支えないと回答した文書です。

照会文に示されている条件は3つです。

  • 研修が、使用者の業務遂行上必要なものであること、または従業員の職務の遂行と密接に関連するものであることです。
  • 研修の受講および事業主の負担について、各従業員の間に差が設けられていないことです。
  • 非課税とされる金額が、その研修を受講するために要する費用として適正なものであることです。
2つめの条件は、通達36-29の2の本文には書かれていない条件です。特定の従業員だけに研修費を負担する運用は、この個別通達の条件から外れます。制度として設計するときは、対象者の決め方を先に決めておく必要があります。

業務に直接必要でない研修を会社が払うとどうなりますか?

給与として課税されます。国税庁の質疑応答事例「講習会の出席費用の負担」には、使用人本人が負担すべき費用を会社が負担した場合には、その使用人に対して費用相当額の給与等が支払われたものとして課税する必要がある、と記載されています。関係法令通達として所得税法第36条第1項と所得税基本通達36-29の2が挙げられています。

この質疑応答事例は、令和7年8月1日現在の法令・通達等にもとづく内容として公開されています。

資格取得の費用も同じ扱いですか?

同じ条文の対象です。所得税基本通達36-29の2には、技術や知識の習得だけでなく「免許若しくは資格を取得させるための」研修会、講習会等の出席費用も含まれると明記されています。職務に直接必要であり、金額が適正であれば課税されません。

ただし、どの資格が職務に直接必要でどの資格がそうでないかを、具体的な資格名で線引きした国税庁の公開資料は、2026年8月27日時点で確認できませんでした。タックスアンサーにも質疑応答事例にも具体的な資格名での例示はありません。判定の基準として公開されているのは、所得税基本通達36-29の2の「職務に直接必要」と「適正な額」、および平成元年の個別通達の3条件だけです。

学費の援助は別の枠組みです。国税庁のタックスアンサーNo.2588「学資に充てるための費用を支出したとき」には、通常の給与に加算して支給すること、役員等や特別関係者向けでないことなどの要件が示されています。根拠は所得税法第9条と所得税法施行令第29条です。

個人事業主が自分のセミナー代を経費にできますか?

できる場合があります。所得税基本通達37-24には、業務を営む者またはその使用人が当該業務の遂行に直接必要な技能または知識の習得または研修等を受けるために要する費用の額は、その習得または研修等のために通常必要とされるものに限り必要経費に算入する、と記載されています。

条文の主語に「業務を営む者」が含まれているため、事業主本人の研修費用も対象です。判定の軸は「業務の遂行に直接必要であること」と「通常必要とされる範囲であること」の2つです。

家事関連費の考え方も関係します。タックスアンサーNo.2210には、家事関連費のうち必要経費になるのは業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られる、と記載されています。

賃上げ促進税制の教育訓練費の上乗せは今もありますか?

ありません。国税庁の「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」には、中小企業向けの措置について、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止されたことを除き現行制度が維持されている、と記載されています。中堅企業向けの措置についても、教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止されたと記載されています。

全法人向けの措置そのものは令和8年3月31日をもって廃止されました。適用時期は令和8年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税からです。

同じ資料の改正イメージには、教育訓練費に係る上乗せ措置(5%または10%)が廃止された一方、子育てとの両立支援等に積極的な企業への上乗せ措置(5%)は維持されたと示されています。

国税庁のタックスアンサーNo.5927、No.5927-2、No.5927-3は、2026年8月27日時点でいずれも令和7年4月1日現在の法令等として旧制度の内容を掲載したままです。タックスアンサーだけを見ると、廃止された上乗せ措置が今も使えるように読めます。適用の可否は「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」で確認してください。

参考として、廃止される前の上乗せ要件は次のとおりでした。令和8年3月31日までに開始する事業年度に適用されていた内容です。

区分教育訓練費の上乗せ要件上乗せ控除率
中小企業者等増加率5%以上、かつ教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上10%
全企業向け増加率10%以上、かつ0.05%以上5%
中堅企業向け増加率10%以上、かつ0.05%以上5%

表の数字は廃止前の制度の内容です。令和8年4月1日以後に開始する事業年度には適用されません。

教育訓練費とは何を指しますか?

タックスアンサーの3ページに共通する定義では、法人がその国内雇用者の職務に必要な技術または知識を習得させ、または向上させるために支出する費用とされています。具体的には3つの類型が挙げられています。

  • 自社で実施する場合の外部講師への報酬、旅費、外部への委託費、施設の賃借料、コンテンツの使用料です。
  • 外部に委託して実施させる場合の委託費です。
  • 他者が行う教育訓練等に従業員を参加させる場合の授業料、受講料、受験手数料です。

役員および使用人である講師への支払いは、教育訓練費から除外されます。

上乗せ措置を適用する場合には書類の保存義務がありました。保存が必要とされていたのは、教育訓練等の実施時期、内容、対象となる国内雇用者の氏名、費用の支出年月日、内容、金額、相手先の氏名または名称です。事前の認定は不要でした。

この記事で確認できなかったことは何ですか?

3点あります。断定できないため、この記事では結論を書いていません。

  • 法人が支出した従業員研修費の損金算入を正面から扱ったコード番号付きのタックスアンサーは、国税庁の公開資料で確認できませんでした。近い内容はタックスアンサーNo.5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」ですが、研修費に固有の記載ではありません。
  • 運転免許や技能講習など、具体的な資格名を挙げて業務に必要な資格とそうでない資格を線引きした公式の記載は確認できませんでした。
  • 役員の研修費が役員給与とみなされるケースを明示した国税庁の記載は確認できませんでした。法人税基本通達9-2-9の経済的利益の例示12項目に研修の語はありません。

この記事はどうやって調べましたか?

2026年8月27日に、国税庁(nta.go.jp)のタックスアンサー、所得税基本通達、質疑応答事例、個別通達、および「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」のPDFを開いて記載内容を確認しました。あわせて中小企業庁の賃上げ促進税制のページを確認しています。税理士事務所のブログや会計ソフト各社の解説記事は使っていません。

通達の文言は、国税庁のページに掲載されている原文をそのまま読み取っています。国税庁の通達のページは文字コードが古い形式のため、テキスト抽出の方法によっては文字化けした内容が返ります。この記事では、ブラウザで原文を直接読み直した内容だけを使っています。

税制は改正されます。特に賃上げ促進税制は令和8年度に改正されたばかりで、国税庁のタックスアンサーにも旧制度の記載が残っています。判断の前には、必ず顧問税理士または所轄の税務署に確認してください。この記事は税務相談ではありません。

確認した公式資料